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Welcom to Essay by Dan !
2005年を素晴らしく、かつ
有意義にしたいと祈念いたします。
Hubble撮影のフォトン・ベルト実写画像です。
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●10月12日(水曜日)
続「金 運」
私の友人のK君から最近、ハッピー・リタイアメントをしたとの連絡葉書が来た。彼は、大学を卒業してから最初に勤めた会社を営々と勤め上げて、何とその会社の関連子会社・社長にまで登り詰めたという、大変な立身出世をした強者である。
3年前に、社長就任の葉書が届いたから、そのことは知っていが、最後は本社の常勤顧問という役職名で退職したとの文面だったので、子会社の社長期間は、僅か3年にしかならない。解任されたのか、はたまた後進に道を譲って辞職したのかは不明だが、そんなものなのかと不思議に思った。多分、彼の性格からすると、あっさりと勇退したに違いない。
彼とは、学科は異なったが、大学も学生寮もクラブ活動も同じだったから、クラスの誰よりも寧ろ親しい間柄である。掛け麻雀をしたり、女漁りに一緒に合ハイだとか、ダンスホールによく行ったものだ。卒業してからは、それぞれ別々の道を歩んだから、住んでいる場所も当然ばらばらになった。ところが、どういう巡り合わせか、私が仕事の都合で関西に居住することになったとき、偶然にも彼と同じ市内に住むことになったのである。
それから彼と私の付き合いは、昔のように頻繁に行き来が始まる。当然、彼の奥様も我々に紹介される。ところが、家内は直感で「なんか感じの悪い、イヤなタイプの人だわ」とか言っていた。確かに、スーパーで買い物に出会っても、知らんふりをされたり、高飛車なものの言われかたをされたとかで、当時は愚痴をこぼしていた。草刈正雄似の彼に相応しい、超美人で高学歴の奥様だったから、家内は見下されていたらしい。彼等には、我々と同じように、丁度同じ年回りの男の子が2人いたにも拘わらず、女同士は、いつの間にか付き合いをしなくなっていた。
当時は彼に会うと、会社で思うように行かないとか、左遷されそうだとか、奥様の病気が大変なんだとか、色々と悩みを聞かされていた。彼女は、心臓の病気持ちで、「それが最近ひどくなってきてねえ、後3年程の命しかないと医者に宣告されたのだよ。だから余計にヒステリックになってきてさあ・・・・、宣告された本人の気持ちが分かるだけに何も言えなくて・・・・・」とか話して呉れたような記憶がある。
また、「通勤に2時間もかかるしさあ、家に帰ると愚痴を聞かされるし、自分も会社で色々と煩わしい想いをしているから、帰り道に殆ど毎日、事業所近くの飲み屋で憂さ晴らしをしているのだよ」ということであった。
そこの飲み屋のママさんからは、「おとうちゃん、おとうちゃん」と呼ばれて大層可愛がられていたようである。彼は名前に、東の字が一字付いていたから、そう呼ばれていたらしい。当時から、飲み過ぎて帰れなくなったとき等は、奥様には内緒で時々そこに外泊もしていたようだ。
そして、今から丁度10年前のこと、とうとう宣告通り彼の奥様は亡くなった。家までお悔やみに我々は伺ったが、彼は意外にもケロッとしていたような記憶がある。そして、その一年が経たない内に、若かったこともあるが、早々と彼は再婚してしまったのだ。実は、彼の父も再婚組で、彼は親父の先妻との子だった。「子は親の言うとおりではなく、親のするようにする」というのは、まさしく本当のことだと思ったものだ。
再婚した相手の人は、矢張りその飲み屋のママさんその人。ママは普通の目立たない顔立ちで和風の人だが、ひとを喜ばせるという特技の持ち主。だから飲み屋は大変に繁盛しており、京都にマンションと嵐山にも別荘持っているという大金持ち。だから、彼は再婚と同時に、期せずしてリッチマンの仲間入りを果たしてしまったのである。
それからというもの、彼が開発した自動車関連商品が会社の屋台骨を支える売上高にまでに成長して、彼の評価は飛躍的に上がり、いよいよその製品を作る工場長ともなり、遂に執行役員にまで昇進するという風に、当然のことのように彼に運が付いて廻ってきた。そして遂に、なんと、その工場を別会社にすることが急に決まり、とうとうそこの会社の社長にまでなってしまったという訳である。
その2回目の奥さんは、誠に上手に彼を褒めて、自信を持たせてその気にさせて、大変に気持ちの良い操縦をして呉れたようだ。家庭にも、笑い声が絶えなくて、いつもにこにことして、人を誠に気持ちの良い環境に置くのが得意だったという。ここでも分かるように、彼の「金運」は、彼女がもたらしてくれたものに違いないと、私は断言する。
話は替わるが、家庭を持った女性は、大雑把に次の三つのタイプに分かれるのではないか、と私は想像している。
@何も言わず盲目的に旦那に隷属するタイプ、
女性上位の昨今、その逆に、
A自分の方が上だと思って旦那を卑下し蔑み、口うるさくがなり立てるタイプ
B旦那を上手に立てて、服従しているように見せながら言うべき事は言い、寧ろ上手に旦那を操縦するタイプ
ここに登場するママは、このBのタイプではないのだろうかと私は考える。無論、男が立場上主人だから、その妻のことを言っているが、立場を変えて、稼ぎの面でもリーダーシップの面でも、女性が主人の場合は、立場は逆転する。
前の話に登場する門真の中道氏の奥さんも、多分タイプBであったに違いない。政治家の妻や社長の妻は、殆どがこのタイプだ。
無論、彼本人の努力は並大抵のことではなかった筈だが、もし彼が奥様とは死別せずに、再婚しなかったら、タイプAの奥様との生活に疲れ果ててそれどころではなかったであろう。従って、おそらく社長にはならなかったのではないかと、私は想像する。
また、ママがタイプBではないとすれば、俗な言い方だがいわゆる「あげまん」だったのかも知れない。関係を持った男性がドンドンと出世していくというあの女性のことだ。しかし、これがこそ、タイプBの女性のことを指して言う「別称」ではないのだろうか。
いずれにせよ、彼の後半の運勢は、彼の再婚に依ってもたらされたものに間違いはない、と私は確信している。そして、とうとうフリー・マンとなった彼は、今や悠々自適の生活を堪能しており、無論彼女との間に子どもはないが、海外旅行三昧の彼女からは今も、「おとうちゃん、おとうちゃん」と呼ばれて甘えられているのだという。
了 ◆
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