総計: 1063577  今日: 35  昨日: 34       Search SiteMap
☆☆☆ Dengaku's Another World
Novels Paint PC Saloon Life Essay by Dan Links MusicVideo&Flash music loop My Flash-Movies bbs Profile
 
 
 loginについて
Login不要ですが最初にお読み下さい。
 更新履歴
直近の更新から変更箇所が分かります。

本家サイト東宅サイト西宅サイトイタリア紀行サイトダンの小説集Healing 虚の本家サイトExciteBlog





Welcom to Essay by Dan !

2005年を素晴らしく、かつ

有意義にしたいと祈念いたします。

Hubble撮影のフォトン・ベルト実写画像です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   日記風エッセイ(32)
   







2005年12月4日(日曜日)

続々「土方、馬方、道具方」 


江戸時代ではなく、今は現在のことだ。田淵光男は、一匹狼の、プロ絵師兼道具方で生業を保っている。大道具として綱元も張るし、舞台に大変に詳しい。絵もピカ一で美しい。全部絵が頭に入っているから、仕上げも早い。大変な人物だ。無論、結婚しており、娘が一人いたが嫁に出したので、現在は妻と2人暮らしだという。この世界に入ってから初めて、私が知り合った人物だ。先般のこと、彼の方から、私に興味を持って近づいてきた。車の中での、彼の話を早速に聞いてみよう。


「『ねえーあなたー、ごぶさたじゃなーい。後生だから、久し振りに抱いて欲しいのよう、ねえあなたーア』とか言いやがってなあ、甘えた声で、水戸公演前の一昨日の夜もなあ、俺の布団に忍んできやがったが、俺は『冗談じゃねえーよ、何を考えてるんだ、てめえ。その気もねえから、おめえとはしたくもねえよ。とっとと出てって呉れ』って蹴ってやったのさ、ホントだぜ」彼は、いきなりヤバイ話から、こう切りだしてきた。「ええっ、それはチョットねえ、はあー」私もそうだが、彼等は一つの家で、もう別々の部屋で寝ているのだという。水戸市での公演が終わり、帰りのハイエースの車の中で、ウイスキーをチビチビ舐めながら、酔っぱらってきたのか、田淵の話が続く。


大道具を積んだ4tトラックが先を走っており、我々が後方から付いて東名高速道を走っている。深夜だから道路は空いており、120km前後は出して走れる。運転は、私と別の者との三人で順番に交代していく段取りだ。今は、静岡辺りを別の者が運転している。次は私の番だから、飲む訳にはいかない。田淵は、今回は運転手をしなくても良い方の番に、ラッキーにも当たっていた。


「俺はね、高校を中退してからこの道に入ったんだ。親父は俺が小学二年の時に死んで、その後暫くして、母親が男を作って出ていったから、仕方が無くてさあ、お婆ちゃんに育てられたんだ。もし身内がなかったら施設送りになるところだったんだぜ。おばあちゃんはな、京都で置屋をやってたんだよ。だからな、その世界のことは、俺は詳しいぜ。何でも教えてやるぜ」「へえー、そんなことがあったのですか。波乱の人生ですね・・・」


ますます饒舌になってきた。「俺はなあ、自民党は大嫌いだ。信用できるのは共産党しかいないぜ。それとな、宗教は仏教に限る。慈悲の宗教だろ、仏教は。仏様がこの世をお作りになったんだぜ、知ってるかい。オイ、お前はどうなんだ」「仏教は共通ですよ、あとはチョット」「なら許そう。話が合うじゃねえかよー、おいーっ」可成り廻ってきたようだ。


「お前はな、知らねえだろうが、女が道具方を今でも買いに来てるんだぜ、ホントだぜ。俺がそうだったから、事実だよ。何回も買われたぜ」もう一人の控えの運転手は寝ており、我々は一番後部座席にいたから、運転している者には聞こえない。ますます増長してくる。「俺が48歳の時だったよ。あいつは28歳で、ここのお囃子で太鼓を叩いていたんだぜ。知らねえだろうが、太鼓は飛び切りの美人じゃないと努まらないんだよ」「何故ですか」「考えてみろよー、おい。単純な道具じゃねえか、太鼓は。みんな顔で音を出しているのさ。美人が叩くと綺麗に聞こえるって訳さ、そうだろ」「成る程、確かにゾクッとするほどの美人揃いですね。黒の着物だから尚更感じますね、はい。それで、その人とは」「さあ、そこさ。20歳も年が違うだろ、俺はもうメロメロさ。相手も28歳で、したい盛だろ。あいつも好きだったから、もう足腰が立たない程だったぜ」「・・・・・・・・・、」


「あんな経験は今までになかったよ。舞台裏だから家内にもバレないしさ、だから5年も続いたよ。公演の時は必ずさ」田淵も絵師ながら、屈強な体格で、役者のように目が大きく印象的な面構えをしているが、ちょっと影のある感じだ。女性の方から誘ってきたという。「彼女が33の時になあ、親の強い勧めがあってさあ、あいつは人生清算を選択して、とうとう結婚することを決めたんだぜー。だから俺はキッパリと別れてやったのさ。どうだい、大したものだろ。今も時々顔を合わすのだが、それが辛くてさあー、今日も来ていた、あのお囃子の美人さんだよ。今日もお前に、色目を使っていたろーが、あの野郎うー、グフンっ」「ああ、あの人ですか、色っぽい方ですねー。そんなことがあったのですか。で、修羅場も無くて、よく何事もなく分かれられましたね。大人ですね、お二人共に」自分で持ってきたという、トリスのハーフ・ボトルは、最早空になっている。田淵の言葉にも抑揚が亡くなり、眼もトロン・トロンしている。そろそろ潮時だと思った。


時あたかも車は、トラックの後に続いて上郡のSAに入り、休憩と交代の時間が来た。次は私が運転手の番で、終点までぶっ飛ばすことになる。面白い話を聞いたので、頭も冴えてきて運転するのにも、ネタを練るのにも丁度良いと思って、車から降りた。


後日、棟梁から聞いた話では、田淵の描く絵は、関西では五指に入る程上手で、信頼が高いという。今は少し下がっているが、2間×1間の背景画で、手取り10万円は取るらしい。大体において、NHK、歌舞伎座、文楽座、遊園地、博物館、などの特命依頼の絵筆だけの仕事で、今でも月に150〜200万円は稼いでいる人物だというのだ。この話を聞いて、破天荒な生き方ではあるが、田淵の人生に素直さと人間らしさ、そして情熱的なものを感じた。だから、これは、寧ろ順序が逆で「道具方、馬方、土方」の方がこそ、正しいと思ったものだ。時あたかも、土木の大親分である建築士の、あってはならない不正が、腹立たしくも、この世の中を騒がしているではないか。





クョスコニョ    [1] 
 前のテキスト: 最初の掲示物です。
 次のテキスト: 日記風エッセイ(31)
 
Dengaku's Another World is Copyrighted (C) 2003 June. Dengakudan's software is all rights only reserved. The spase photos are presented by Hubble Space Telescope.