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 田楽男の小説
小説の背景と概略紹介
                     

  

  5.「流れ星」  Back Number 保存庫

                         

                                                        

                        流れ星

 

 

 

 

 

                      

 

 

 

 

 

   「流れ星」の前書き

 

 

 

岡田美子を主人公にして、この事件は多次元に展開していくことになるが、予想もつかない混迷の中に、話が迷い込む。岡田美子が初めて恋をした男、村瀬物産鰍フ社長・村瀬純一は、岡田美子の部屋で、何者かの手によって青酸ソーダを飲まされ、毒殺されている。部屋には鍵が掛かっており、誰も、部屋から出入りした様子はない。所謂、密室の殺人事件である。そして繊細な岡田美子は、村瀬を思う気持ちと自責の念に支配されて、発狂する。事件は、岡田美子の会社の同僚である、田村昭子から警察に第一報が入る。辛くて、哀しい恋の物語である。

 

 

西の空にひときわ大きな流れ星を見つけた岡田美子は、胸の前で手を組みつつ、じっと暗い空を見上げ、流れ星の軌跡を目で追いながら真剣な眼差しで、願い事を星に託す。刑事の質問にも、耳を貸さず、虚ろな目で、独り言をつぶやくばかりだ。

 

 

 

<登場人物、以下の13名>

 

 

岡田美子  主人公。新潟県は柏崎出身の26歳のOL。ブレーン社の大阪支社で、営業2課に在籍し、営業を担当している。岡田の向かい側に中野、横に田村。田村の向かいに北村、横に森田。森田の向かいに吉田が座している。計6名の課員全員が女性。営業先の顧客である、村瀬純一に初めて恋をする。

 

村瀬純一 サブ。大阪の長堀橋にある村瀬物産鰍フ社長で、何者かに、毒殺される。

 

岡田民子 美子の母親で、今は、中埠頭のポートタウン西の9階建てのマンションに住んでいる。

 

北村英子 佐藤知也の元妻で、最近離婚してブレーン社に就職。同じ課の同僚だが、岡田美子とは仲が悪い。

 

中野、森田、吉田 営業2課の職場の、その他の同僚で、全員が女性。

 

秋元  茂 岡田美子の上司。元々は、制作課長だったが、田淵の後任として、今は営業2課の課長をしている。バード・ウォッチングが趣味。

 

田淵一彦 秋元の前の課長、宮下春子と愛人関係になりブレーン社・高松営業所に異動となる。

 

宮下春子 田淵との同棲がバレ、退職。現在、茨木に住んでいる。

 

田村昭子 岡田美子の親友で同僚、職場の大先輩。年齢が30歳を越えている。

 

佐藤知也 村瀬の親友で、南港のハヤット・ホテルでフランス料理店のオーナーシェフをしている。最近、北村英子と離婚し、現在はバツイチの独り者。

 

関根刑事 住之江署の、この事件の   

     担当刑事。

 

 

★事件の現場は、ポートタウン西の37号棟・412号室の岡田美子の部屋。

 

★最寄りの駅は、大阪地下鉄四つ橋線・終点の住之江公園駅から、モノレールに乗り換えて中埠頭駅で下車して、徒歩2分。

 

 

 

<プロローグ>

 

『どうなっているのだ、妙だなあ。あの部屋は』

秋元茂は大事にしている、バード・ウォッチング用のミニ双眼鏡を眼球に押しつけたまま、独り言をつぶやいた。彼は、ポートタウン西・37号棟の412号室のドア側を、中埠頭駅のホームから見ている。今日の午後は、晩秋の日射しが、心地よい。

『あっ、今度は左隣の411号室のドアから岡田が出てきたぞ。不思議だなあ。確か、岡田は右隣の412号室のドアから入った筈なのに、ベランダ伝いに隣の部屋に移ったのだろうか。よし、下に降りて、もう少し近づいて、調べてやれ。それにしても、今まで一度も欠勤したことのない、岡田君がどうしたというのだ。三日間も続けて、無断欠勤をするとは』

 

 

秋元は、連絡なしに、一昨日から3日続けて会社を休んだ、部下の岡田美子の自宅を密かに訪ねて調べにきていたのだ。電話を掛けても通じないし、こうするより他に方法がなかったからである。無断欠勤のこともあるし、また妙な事件にでも巻き込まれていれば、自分の管理責任が問われると胸騒ぎがして、難波から急いで、大阪南港のポートタウン西・37号棟の彼女のマンションまで出てきたという訳だ。地図で調べて来たので、彼女の住んでいるこの分譲マンションはすぐに見つけられた。この辺りは、殆どが大阪市内に勤めているサラリーマンを対象とした、中級の分譲・集合住宅で、大規模団地となっている。

 

住宅の周りは車道と歩道が整備され、それに沿って高い樹木も植えられている。また、公園やマンションへのアプローチは、多くの植栽で囲まれている。幸いにも、人が立って双眼鏡を覗いて居ても、違和感はない。秋元は、エレベーターで四階に上がり、解放廊下を歩いて、岡田美子の部屋の前まで着いた。そして、ドアをノックしたり、インターホンを押すが、返事がなく誰も出てこない。しかし、岡田が部屋に居ることは、先程見たから間違いはないと秋元は確信している。誰かが、部屋にいる気配も感じる。今度は、ドアをドンドン叩きながら、声を出して呼ぶ。

「おうい、岡田君。部屋に居るのだろ、分かっているのだぞ。おうい、返事をして呉よ。岡田君、どうしたんだよ、返事をしなさい。明日からは、絶対に出社しなさいよ。絶対だぞ」

随分待ったが、それでも、返事がない。同じ事を、念のために隣の411号室の前でもしてみるが、全く返事がなく、誰も出てこない。秋元は、そのまま暫く待ってみるが、物音一つしない。仕方がないので、彼は、とうとう諦めて引き返す。

 

帰り道に、中埠頭駅のモノレールのホームに立って、もう一度、彼女の部屋を目で探した秋元は、ハット気付く。このホームから彼女のマンションを見るのが、最も見え易く、しかも、マンションの玄関ドア側はホームから、またベランダ側は住之江駅に向かうモノレールの車内から、丸見えだと偶然にも発見する。駅のホームからマンションのドア側が見えるのはこの37号棟しかなかった。

 

 翌日、何事も無かったかのように、出社した岡田美子は、風邪で発熱して、肺炎になりかけたので病院に行っていたと、平然として理由を言って、秋元に謝罪して、年休届けを事後提出した。しこりが残るが、一件落着だ。秋元もそれ以上には追求しようとはしない。しかし、その後も、何故か、同じようなことが時々、続けて起きるようになる。

 

それからというもの、岡田への不信感に駆りたてられたのか、大阪南港のWTC高層ビルに、営業に行くと言っては、合間を見て住之江駅から中埠頭駅に出てきて、ホームから双眼鏡で観察する秋元の姿が度々見られた。辺りは、人工の並木林が数多く作られており、鳥たちも多く集まっている。

 

幸いにも、双眼鏡を握っている秋元のその姿は、物好きな男のバード・ウォッチング姿としか、周囲には写らなかった。今日の夕刻も、秋元は、双眼鏡を目に当て、ドアの方に注視して、じりじりと距離を詰めて、とうとう彼女のマンションのスグ近くまで来てしまったのである。初冬の辺りは、寒々しく、すっかり薄暗くなりはじめている。

『今度こそは、絶対に、調べてやるぞ。なんか、ありそうだ。あれっ、誰だ。誰かが、岡田の部屋に入ったぞ。変だなあ。よし、もうチョット近づいて調べよう』

好奇心に駆られて、再び、岡田美子の部屋のドアまで来た秋元は、新聞受けの口から、中を覗いて、あろうことか、驚くべき事実を発見するのである。

 

 

 

 

 

 

 

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