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 田楽男の小説
小説の背景と概略紹介
                     

  

  6.「人生の小劇場」  Back Number 保存庫

 

 

 

            

4. ルビーネット社への電話の場

 

 

 

 

金村に会った翌日に、金村洋子から聞いたルビーネット社の、電話番号を電話局で調べて知り、中田は島村達雄に早速、電話する。

しかし、そのときは、島村もその上司も生憎、営業で外出中だったので、営業所長の名を聞き出す。ルビーネット社・東京営業所の所長の名は、北村修三といった。北村所長は、中田が掛けた電話に出て、横柄にこうだ。

 

 

 

「ロイド社の何処の誰様だか知らないが、当社の島村君に何の用なのだ。キチッと筋の通った話の内容で、用件をいわないと島村君を君に会わせる訳にはいかないよ、君。よく、考えたまえ、こんなことは常識だろうが」

 

 

 

ロイド社は、世間の認知度がまだまだ低かった。無理もない話だ。

「それなら申しますが、お宅の部下の島村達雄さんという人が、私の部下の女性を恥ずかしめたので、その理由を聞きたいのと、もう二度と、してくれるなと、話がしたいのです。それで、島村さんに直接お目にかかりたいのです」

 

 

 

中田は、差し障りがあってはと、写真のことは詳しく言わずにぼかして言う。

「部下の女性を恥ずかしめた。なんのことだいそれは。先程も言ったように、話を詳しく具体的に言ってもらわなくっちゃ、理解できないよ、君」

「その女性のプライバシーに拘わることですから、島村さん以外の人には、詳しくは話せませんが」

「なに、詳しくは話せないって、それならこちらも、島村君を君に会わせるわけにはいかないよ」

 

 

しつこく彼も食い下がり、不味いことに、とうとう捕まってしまった。仕方がないので、営業所長だという北村の役職を信じて、他言を絶対にしないと約束もさせて、例の一件をかいつまんで話した。金村洋子の恥ずかしい写真が投函されたこと、これは島村がしたことに違いがないから、彼に反省してほしいこと、問題の写真のネガも全部返して欲しいこと、またこれ以上、彼女をつけ回すのをやめて欲しいこと、という金村本人の意向を北村所長に伝えた。

 

 

 

 

「君、それは本当のことだな、間違いないな。で、いつのことなんだ、それは」

「昨日です、それは当社ビルの郵便受けに投函されていました。全部で丁度10枚、それは入っていましたが」

なぜか、鬼の首でも取ったような、半ば喜々としたダミ声の口調で、北村は確認する。

 

 

 

「そういうことなら君、島村君は、明日は会社にいるから、朝一番で彼に電話したまえ。私の方からも、島村君に話しておいてやるからな」

中田は、狡猾な奴に捕まって、余計なことを言ってしまったと反省したが、もうどうしようもない。この時は、これが、後々、大事件の引き金となるとは、想像だにしなかった。

 

 

 

ルビーネットという人工宝石は、近畿商会が本業の副産物として開発に成功した製品で、当時は丁度、その販売の為にとルビーネット社という販売会社を設立し、全国に営業拠点の展開を始めたばかりの頃だ。中田の知る噂では、近畿商会で使いものにならない連中を集めて、ルビーネット社に出向させ、出向社員だけで販売拠点を組織したとのことであった。道理で、あの北村所長ありきと思う。

 

 

 

 

北村所長にいわれた通り、翌日の早朝、島村達雄に電話して、更にその次の日の午後3時に出会いたい旨を伝える。また、相手が分かるようにとルビーネット社の会社の大きな封筒を目印に持ってきて貰いたいこと、そして問題の写真のネガと残りのプリント写真を全部、必ず持ってきて欲しいことを要求して、念を押す。北村所長から、事前に本人に話がしてあったのか、観念したかのように、島村達雄は当方の要求をのみ、素直に約束に応じて呉れる。正直いって、もうこれで、事件解決の見通しは明るくなったと、中田は楽観する。

 

 

 

 

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