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 田楽男の小説
小説の背景と概略紹介
                     

  

  4.「西方体験録」 Back Number 保存庫

            

 

       

 

(3) ニューヨークの青目でブロンドの女

 

 

 厳冬の1976年1月1日夕刻時間、マンハッタン島のニューヨーク空港に着地。昨日の夜は、ボストンのホテル。大晦日のドンチャン騒ぎで乱れたので、体が気怠い。ニューヨークの街は、雪が激しく降っている。道路には、除雪車がゆっくりと走り回る。どのマンホールからも白い湯気柱が、幾筋も、幾筋も辺り一面に立ち昇っている。地下に温水パイプが埋め込んであり、またホテルで使われた温水が、下水となって流れ込むからだと聞く。憧れのN.Y.での、滞在期間は7日間。

 

 

 

 美術館巡りが、主な目的だ。美食では決してない。ボストン美術館は、バスタン・ファインアートブ・ミュゼアムと言わないと通じないが、螺旋ループの美術館・グッゲンハイムとニューヨーク近代美術館、所謂メトロポリタンはそのままで通じる。この街にある、美術館を片っ端に、見て回る計画だ。

 

 

 メインは、ホノグラム美術館。マンハッタン島の南端の、あのテロで倒壊して今はもう存在しない、日本人が設計したという、WTCの超高層双子ビルに向かう。その最上階にも昇って、長時間NY市街を360度眺望した。

 

 

豆粒の車が、止まっているように見える。そのWTCビル近くの、ソーホー地区でホノグラムを発見。レンガ造りの倉庫の一つを改造した美術館だ。当時、ホノグラムは、立体テレビになると、その前途が期待されたが、今では消滅している。しかし、ここにあるのは、透明な筒の中にいる透き通った中年男性の人物像が、緑色の光に包まれて、360度回転しながら動作するという立体映像だ。このニューヨークで最先端の美術に自分だけが触れられたという、優越感をすら感じた。

 

 

市街を歩いていると、少しも違和感がなく、ここに住め、住めと靴が鳴る。しかし、私には決意ができなかった。むしろ、勇気が無かった、と言った方が正しい。現状に甘んじていたからである。アメリカン・ドリームが靴の下にあったというのに。

 

 

 

 NY5番街のホテルに宿泊。その日の夜、ホテルの二筋先までほろ酔い機嫌でふらつく。信号待ちの交差点で、青目のブロンド女が、私に声を掛けてくる。メイク・ラブのお誘いだ。170ドルでいいという。25、6歳のスラリとしたプロポーション。ルーマニア辺りの東欧系の、若く美しい女だ。

 

E氏の言葉を思い出し、まあいいか、何事も体験だと、すぐ近くのそれ専門と分かるホテルへと引っ張られる。ホテルに入ると、床が茶色に光る磨き石で敷き詰められた豪華なロビーが目に入る、その先はカウンター。ガードマンのように体格の良い、いかつい男がカウンターに立っており、女は金を払う。ホテル代だろうか。

 

 

       

 シャネル系の強い香水で隠してはいるが、青目の女は、若いのに似ず、体臭が強く、獣臭い。ことが終わると、突然、女が大声で喚めきはじめた。両手を上げて、大袈裟なジェスチャーで。何と、あれが、だらしなく破裂しているではないか。女は、母国言葉でギャーギャー騒ぎ、怒りながら後始末をしている。早口なので何を言っているのか、聞き取れない。

 

 

  しかし、今日という日が、危ない日だよ、どうして呉れるのさあ、兄さん、と言うことらしい。まさしく、後の祭りだ。

 

 

 

 部屋を出る前に、100ドル札2枚を出す。お釣りを呉れと言うと、また、女がギヤーギヤー騒ぎ立て、結局、お釣りは返らず仕舞い。酔いも、すっかり醒める。その後、女は、私の名前、住む都市、会社の名、とかを聞いてくるが、差し障りのない受け答えでノラリクラリ。ホテル前の通りを少し歩いた角で、バイバイする。

 

 

 ニューヨークで、後味の悪い体験だ。外の通りは、ゾクッとするほど寒く、小雪が光に舞っている。辺りは、午前2時でも普段通りの賑わいを見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

            

 

 

          

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