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 田楽男の小説
小説の背景と概略紹介
                     

  

  2.「私説・3億円事件」 Back Number 保存庫
                

 

 <あとがき>

  

         

       

            武田さんは、その後どうなったのか、その時から職場を離れた私は、彼の消息を全く知らない。そして、事件は時効を迎え、今この事件の犯人は永久に封印されてしまったままとなっている。今から30年程前の3億円だ。大卒の初任給が245千円頃の時代である。現在の貨幣価値に換算して、ざっと30億円強の金額であろう。どこかで、彼はきっと優雅に暮らしているのだろう。それとも、どこかでホームレスをしているのだろうか。いや、慎重で用意周到の彼は、きっと海外のどこかで悠々自適の生活を送っており、そしてネットを使った新たなる仕事の計画を着々と実行しているのに違いないと私は思う。3億円事件の沈黙を保ったままで。

       

           長い間、私の胸にしまっていた封印を解き、この疑念を全てさらけ出し、私は心から解放されホッとしている。私の人生の中で、社会に出たばかりの若い頃の、ほんの短い期間に体験した、私が犯人と断定した人との奇妙な接点を、諸君にありのままに語り尽くして、今は安堵感で一杯である。事実は小説より希なりだ。しかし、ウェブ・ネットを張り巡らせている彼が、私のこのHPに到達して、この実験小説を読んだ時には、ワープ・スルーして私の処に来て、『余計なことを書くな。約束を破ったな、田中』と言うだろうなあ。そして、私の命はないかも知れない。

     

     実は、この最終回をオンしてから2日目の深夜のことだ。それがやってきた。私が寝ている8畳間の和室の天井に、何か妙なものが飛んでいる様な音がして、ぼんやりと私は目覚めた。パタパタパタ・パタパタと、妙な音を立てて、寝ている私の頭の上を、何かが飛び回っている。真っ暗な中なので、判別できないが、確かに何かが飛んでいる。黒い陰と、サーツと空気の揺れるのも感じられる。ぞっとして電気を点けた。目覚ましの時間を見ると午前2時半を指している。私は見た。それは、蝙蝠だ。紛れもなく蝙蝠だ。どこから入ってきたのか、蝙蝠が私の寝室に飛んでいるではないか。翼の大きさが145cmにもなる大きい奴だ。大変に吃驚し、ゾッとして本気で目覚めた。

     

         こんなことは、今までになかったことだ。幻覚ではない。奴は、紛れもなく私の布団の上の、天井の周囲を飛んでいるのだ。一瞬に、私は理解した。彼が来て、警告を発しているに違いないと。

    

私は、寝ながら読んで枕元に置いている、いつもの新聞紙を丸めて、叩き落としてやろうと何回も何回も、そいつをめがけて振り回した。そして、とうとう叩き落としてやったのだ。まだ、ヒクヒクと動いているが、紛れもなく蝙蝠だ。近づいて見ると、妙な臭気が漂っている。臭い、臭い。非常に気味が悪い。落ちたのを新聞紙で繰るんで、丸めて、ゴミ箱に入れた。再び寝ようとしたが、寝付かれず、とうとう朝四時に起きる羽目となる。いつものように、6時前に起きてきた家族の者にも、それを見せて確認させたが、紛れもなく、それは蝙蝠だった。これは、幻想でなく、事実なのだ。

 

いよいよ、私は彼に捕らわれてしまったのか。次は、どんな手でやって来るか、今の私は、大変に緊張している。公開してしまったからには、もうどうしようもない。彼の標的になるだけだ。私の命のあるまで、諸君、さらばじゃ。アディュ、さらばじゃ、さらば。

 

あろうことか、そして、またそいつがやって来た。今朝、ネットカフェの私の頁に、奇遇? とだけ書き込みをいれて、誰だか知らない奴がやって来ていたのだ。予想通り、ネットを使ってアクセスしている。ああ、どうしよう。暫くは、じっとしていよう。奴に、捕らわれないように。諸君、今度こそ、ホントにさらばじゃ。さらば。

 

ああっ、なんだこれは、さらばどころじゃないぞ。システム破壊のソフトを送りつけてきたぞ。ああっ、とうとう壊れた。そして、今やっと復元したのだ。ホントに朝からシステムの全面入れ替えをしたのだ。ゲェーッ、何だこれは、マイドキュメントも全部真っ白になっている。FDに少し残っているが、総てぶっ飛んでしまっている。ワアー、全部作り直しだ。

 

奴だ、奴に違いない。いよいよ、奴が攻撃開始に出て来たんだ。さらば、諸君。

 

                                                              

 

 

 

 < この小説は、昭和50920日初版 鎌、文社 発行の、平塚八兵衛 「三億円強奪事件」を参考に致しました。謹んで、ここにご報告を申し上げます。 >

 

 

 

 

 

 シリーズの「私説・3億円事件」は、この「あとがき」で、連載の全てが終了いたします。長期間のご愛読を、誠にありがとうございました。

 

 

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