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 田楽男の小説
小説の背景と概略紹介
                     

  

  1.「トラベル・ジャーナル」 Back Number 保存庫

      

    

5. ドッペンゲルガー

 

人間は、あの世から転生をしてきて、現世に生きている訳であるが、私の場合には、その『魂の転生インストール』がどうも不完全であるような気がする。丁度、生物発生が不完全であるのと同じ様な状態なのだろう。あの世とは、宇宙生命母胎ではないかと、漠然とではあるが、私は感じている。

 

何というか、最近になって、私自身が異なる場所や時代に、行き来しているような気がして仕方がないからだ。その間における自分は、どうも無意識下あるようだ。なにをしていたのだろうと思うことが、多い。意識の欠落というか、記憶が出来なくなってしまっているというか、歳のせいだけではない、トラベル状態の時もあるようだ。さっきまで何をしていたのかも分からなくなることが最近多い。

 

私が、通勤の最寄り駅である、地下鉄の高架地上駅のホームに立って、平行して走っている高架道路の車をボーッと眺めていると、白いワイシャツにピンクのネクタイをした男が運転している車が一瞬過ぎ去るのを目撃したが、なんと、それは私ではないかと思えるほど、横顔のよく似た男が運転していたのだ。また逆に、同じ道路を私が社用車を運転していて、何となく気になる、その駅のホームを見て探すと、そこには、私自身がホームに立っているではないか。空似というには、誠に瓜二つの男が、そこには写っている。まさしく、私そのものに間違いない男が、蜃気楼のようにホームに立っているではないか。最近は、その駅以外の場所でも同様の体験が、一回や二回ではなく頻繁に起こっている。

 

他人の空似か、私がもう一人居るのか、もう一人の私が私を監視しているのか、もう一人の私は、また違う人生を歩んでいるのか、誠に説明しがたい、離人症に似た、誠に奇妙な感覚体験を幾度となく経験してきている。最近では、その駅だけでなく、営業で都市部のオフィス街を車で走っているときにも、この現象が起きている。運転中に、注意して探してみると、向かい側の歩道に、何と、私自信が歩いているのを発見したものだ。逆に、ファサードが全面ガラスの小綺麗なレストランで食事をしていると、車で走っている私自身を目撃することもあった。

 

「これは、一体どういうことだ。私の妄想か、見間違いか、空似の他人か、私の陰か、第2の私か、私の複製イメージ像か、どちらかがどちらかに行ったり来たりしているのか、どうなのだ。離人症が復活したのか」

自問自答してみても、明快な答えがでない。しかも、最近、この現象が、頻繁に起っているのだ。そうだ、これはドッペンゲルガー現象に違いない。きっと、そうだ。

 

現在は、地球年の西暦20035月。殊に、体調がすぐれない。持病の心房細動の発作が、また頻繁に起こる。不整脈も激しい。心臓の激しい発作時は、脳髄がクラックラッとして、一瞬、無意識状態となり、前後不覚となる。この現象は、心臓の持病からくるのか、或いは離人症からか、はたまた、宇宙生命の母胎からの転生インストールが未熟だったからか、ドッペンゲルガーの副作用なのか、私には判断がつきかねる。

 

そうか、もしかすると、宇宙生命母胎からの、次なる転生指令の前触れなのかもしれない。次なる転生は、蜃気楼のように地球地面にだけ這い蹲っている狭い視野の地球人ではなく、超念導エネルギーを発見して、宇宙を過去現在と自由に時空移動ができる、宇宙生命母胎から最初にインストールされた、私の魂の生まれ故郷である、カニ座大星雲のα星人にインストールしてほしいものだ。異空間を、時空ワープ・スルーをして、α星人としての、新たなスタートを切りたいものだ。

「地球人諸君よ、さらばじゃ。さあ、これからが、本当のトラベルだ。トラベル・ジヤーナルの始まりだぞー」

 

 

           <第5話完>

 

 

 

 

「トラベル・ジャーナル」は、これにて全てのシリーズが完結いたしました。全編をお読みいただきまして、誠にありがとう御座いました。心より、御礼を申し上げます。

 

 

     

 

 

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